映画「凶悪」 感想
あらすじ(引用)
ある日、ジャーナリストの藤井(山田孝之)は、死刑囚の須藤(ピエール瀧)が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、仲間内では先生と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男(リリー・フランキー)の罪を告発する衝撃的なものだった。藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始め……。(Yahoo!映画)
昨日見てきた「怒り」も後味の悪い作品だったが、この「凶悪」もまた強烈なインパクトを与える作品である。
この映画では、人が誰しも持つ「凶悪」な部分を躊躇なく描いている。
散々罪のない人々を虐殺した挙句、法廷では改心した素振りを見せて死刑を免れようとした須藤(ピエール瀧)、
その須藤を右腕代わりに利用し、首謀者として数々の殺人を計画し、最終的には須藤を切り捨てた不動産ブローカーの木村(リリーフランキー)のような犯罪者は勿論当然である。
しかし、そんな2人を追ったライター藤井(山田孝之)とその妻(池脇千鶴)もまた「凶悪」な一面を持つと感じされるシーンが描写されていた。
藤井は事件の真相解明に没頭しすぎるあまり、家庭を顧みず、妻に見限られた。そして、その熱量が溢れすぎたために木村にさえ「自分を最も殺したいと思っている人間だ」と言わしめた。
妻もまた、認知症の藤井の母の介護による疲れとはいえ「殴っても何も思わなくなった」と告白したり、スクープに注視する藤井に対して「この事件おもしろかったんでしょ」と発言する。
この映画では確かに人を嬲り殺し、死を弄ぶ須藤と木村のシーンが数多く描かれているが、それだけではなく、「凶悪」というタイトルには、終盤に進むにつれて膨らむ藤井の常軌を逸した殺気や妻の悪意を持った鋭利な言葉のように、我々一般人が持ち合わせる「凶悪」な側面もまた同時に込められていると私は感じた。
ただそれが行動として表出していないだけで、いつ牙を剥くかは分からない。
電器屋の家族も直接殺人には加担していないが、家族を売ることで自らが生きる道を選択した。
人間の恐ろしさを思い知らされる作品である。
映画「怒り」 感想
人が泣く理由として、嬉し涙や悔し涙、そして悲しみの涙がある。
この「怒り」ではとにかく慟哭シーンが多い。
よくある映画のパターンでは、恋愛絡みの痴情の縺れや別れを原因とした涙、誰かの命が断たれることによる涙というのがほとんどを占める。
しかしこの映画はタイトルからも見て取れるように根本的に怒りを発端とした涙である。
こう表現すると「復讐心に駆られる」というキーワードが頭に浮かぶかもしれないが、決してそうでは無い。
あくまでもその怒りは自分の不甲斐なさに対する怒りである。
この映画は3つの別々のストーリーがそれぞれで展開するオムニバス形式の作品である。
家出をし、風俗で勤めていた娘(宮崎あおい)を連れ戻し漁港で働かせたものの、同じく漁港で働く前歴の分からない男(松山ケンイチ)と惹かれ合うことになり不信感を抱く渡辺謙。
ハッテン場で知り合った家も仕事もない男(綾野剛)とともに1つ屋根の下で暮らし始めた妻夫木聡。
家族間のトラブルに辟易し、リフレッシュで友人(佐久間宝)と近くの無人島に足を踏み入れたところ、そこに数日前から住む同じく謎に包まれた男(森山未來)と打ち解け次第に心を開いて行く広瀬すず。
それぞれのストーリーが展開して行くにつれて生じる「怒り」。
それだけではただの尖った心理状態を描いた作品にとどまってしまうが、この作品はまた未解決の八王子夫婦殺害事件とも同時に絡んでくるところが肝である。
事件の指名手配犯の顔写真が公開され、いま付き合いをしている正体不明のこの人物が果たして本当に犯人ではないと言えるのか。信じきることができるのか。
ミステリー要素を念頭に置きながらも、犯人についてはストーリーの中では深く掘り下げず、あくまでも各登場人物が抱く人間に対する信頼、または裏切り、その狭間で揺らぐ葛藤が細かに描かれている。
完全なネタバレはじめ
この作品で唯一でもあり最大の疑問点は、なぜ犯人が2箇所で「怒」という文字を残したのかという点である。
最終的には犯人が誰であるのかが判明し、彼は思ったことをそのまま文字にする人物だと刑事が考察する場面があるが、そこに至るまでの動機が全く分からない。
まず、物語の冒頭で観る人の心をぐっと掴む、あの血で塗られた「怒」という文字。
犯人はなぜ「怒」ったのか。
自分の中でイマイチこれというのが分からない。決してサイコパスだから、頭がおかしいからという理由だけではないような気がする。
ただこの部分は元同僚の土木作業員が、犯人は元々プライドの高い人物であり、作業現場を勘違いし灼熱の中疲れ果て、ある家の石段に座っていたところ、その家の奥さんが心配してお茶を差し出してくれた心遣いを見下されたと解釈しカッとなって殺害したと話していた描写があったので一応は納得することにする。ただ、これはあくまでも元同僚の主観であるので真相はよく分からない。というかこれでは腑に落ちないのが現実。
そしてもう1つは犯人の部屋に大きく描かれた「怒」という文字。
ここからはもう完全なネタバレになるが、
田中がキッチンで大暴れし破壊行動に至った原因は何故か。それは泉に対する怒り?辰也に対する怒り?それとも民宿の人も含めた全てにあらゆるものに対する怒り?
田中が三味線のリズムに合わせて民宿のキッチンで踊っていた描写があったが、その時の心理状態とは何が違ったのか。
と考えるとやはり泉に対する米兵による暴行がきっかけなのだろうか。それは、宿泊者の荷物を乱暴に放り投げる場面からも暴行シーンによる影響が見て取れる。
田中は、泉が襲われ辰也が怯えてそれを眺めるしかできなかった様子を偶然目撃し、部屋の落書きからも分かるように「ウケる」と感じた。
でも本当は田中もまたそこで間に入って暴行を止めたかったのではないのだろうか。
ただそれができなかった。しなかった。
そこには彼のプライドの高さが関係してくるのではないか。
田中にとっては、若い男女の仲を取り持つ理由もないし、またこの少し前のシーンで3人が偶然会い酒を交わすシーンがあったが、そこで田中は酩酊状態の辰也にバッサリと好き勝手なことを言われている。
いくら酒の席とはいえ自分をコケにした人物をあの場で助けるという行為はプライドの高い田中はできなかったのであろう。
ただ、それでも泉とは親しい関係であり、そこで彼女を救えなかった自分自身に対する怒りがあの自室での「怒」に表れているのではないかと私は思う。
ヒントが少なすぎてよく分からないが。
ネタバレ終わり
まとめるとこの作品は一見ミステリー映画に見せかけた人間ドラマに焦点を当てた超豪華俳優による映画である。
特に、「容疑者Xの献身」「告白」のようなミステリー×ドラマの「信頼」をキーワードにした作品が好きな人にはオススメである。
逆に言えばプロローグから心臓を鷲掴みにされ、それをラストまで揺さぶられ続けられる作品であるので重い映画が苦手な人や、また過激なホモ描写やレイプシーンがあるのでそういうシーンが耐えられない人にはオススメできない。
ただ、私個人としては映画の良し悪しはその映画について視聴後に考え続けた時間の長短によって決められるという評価軸を自分の中で設定しているので、そういう意味では最も長い時間考えさせられる映画であったため、今年の中では1番面白かったと自信を持って言える。
そして、感じたことをこうやって羅列していくうちにようやくわかったことで、先ほどの問いに自分自身で答える形にはなるが、結局他人の「怒」る原因なんて誰も分からないというのがこの映画で1番言いたかったことなのではないかと思う。
ネットで本作のレビューや感想を検索してみると分かるが、どの批評も犯行動機を言い当てられていないし、怒という文字を書き記す理由が分からないと記述している。
だが、それが分かったら誰とも不和なんて起こらないし、軋轢なんて生じない。
「怒り」という感情はとどのつまり本人以外の誰にも理解されることはない。
そういうものなのである。
だから、作中でも描写されないし、描写できない。
ということで納得しようかな。
ここまで冗長に書き連ねてしまったが、何を言いたいのかというともうすぐ劇場公開が終わってしまうかもしれないのでみんな是非とも映画館で見ましょう。ということです。
ちなみにこんな陳腐な文章を書くのに3時間もかかってしまった。難しいなあ。
でも楽しい。
おわり
古舘佑太郎 「BETTER」
この前、タワーレコードNU茶屋町店のインストアライブに行ってきました。
例のごとく古舘佑太郎のライブです。
対象の新作アルバム購入者にはサインをしてもらえるということでした。
30分ほどでライブは終了。
やっぱり生演奏はいいですね。
タワレコのトイレで古舘くんに会った時は挙動不審になってしまいました。
びっくりしました。
ここからは収録曲の感想を書き記していきたいと思います。
①本をめくるように
ちょっと違うかな。
グレイプバインっぽさがある。
青春パンクが少し抜けてJPOP色が強まった感じがめっちゃいいです。
悲しい出来事は特にないですし、共感もできませんが哀愁漂う歌は好きです。
音楽を聴く時は99%1人なのでそういう歌は曲の世界観に入り込みやすいのかもしれないです。
②Under North Swamp
曲に青春要素が入ってくるアーティストはやっぱり惹かれますね。
短編映画を見ているような。
「志半ばで別れた 仲間たちの栄光が
グラスで溶けた」
という歌詞、かなり破壊力があります。
とくに前のバンドを好きだった人はそうじゃないかと思います。
サビで繰り返す「フリーマーケットだった」という言葉が頭から離れなくなります。
古舘くんっぽい曲です。
アジアンテイストなメロディ。
長澤知之?みたいな歌声がラスサビで入ります。
古舘バンドはベース、ドラムがALの2人なのでありえる話ですがどうなんでしょうね。
④トマトキャンディ
トマトキャンディってトマト味のキャンディ?
自分はそもそも存在を知らなかったんですが、調べてみたらあるそうです。
おいしいのかな。
「トマトキャンディ君は好き 僕はちょっと好き」ということなので今度食べてみます。
最後に 「ちょっと好き だったよ」と過去形で終わるのがいいですね。
この歌詞の近頃は会えていない君との別れを暗示しているところが特に。
⑤サヨナラナツキ
このアルバムは別れの歌が多いですね。
最近は4つ打ち高音サビの時代もそろそろブームのピークが過ぎて、対象的にギターのクリーンサウンドに芯のあるボーカルが乗っかった縦ノリのできる音楽が台頭してきているという印象ですが、この曲なんかも縦ノリとまではいきませんが、素朴で切なくていいですね。
⑥ジンコウエイセイ
遠く離れた場所でも同じ人工衛星を見ることができるという歌詞ですが、なぜ人工衛星?
ラスサビで伸びて行くところが古舘くんっぽい。
⑦モルツの泡
ライブで本人が言っていたちょっとふざけた曲。
ベースがワウっぽくてキーボードの電子音やブラスも入っていて面白いです。
⑧ハッピーアイランディア
1stソロアルバムの「熱帯夜のコト」にちょっと雰囲気が似てます。
2曲連続で色んな音が入ってるなとは思いましたが、歌詞カードの真ん中にpianoと書いてあるのを発見!
なるほどね〜
そういう曲をくっつけて収録したわけですな。
⑨ラヴ・ソング
最後は弾き語り。
どうしてなんでだろう?と自分に何度も問いかける。
どうしてなんでだろう? どうしてこんなにも胸に突き刺さってくる歌を歌えるんだろう?
以上
今回のアルバムは歪みという歪みが全くと言っていいほどない今までとは180度真逆の曲ばかりですが、いかにもソロアーティストらしいアルバムでかなり好きです。
知らない人も知ってる人も聴いて損はないですよ。
トライアウト
今日はトライアウトを見に行ってきた。
トライアウトというのはプロ野球12球団から戦力外通告を受けた選手や独立リーグなどのノンプロの選手がNPB復帰(要するにプロの球団に雇ってもらう)を目指す1つのアピールの場として行われる合同テストのことである。
今年は甲子園で行われるということでせっかくの機会なので足を運ぶことにした。
プロ野球というのは毎年新しい選手が多く入団していくが、また同時に多くの選手が球界を去っていく。
その中でもまだ夢を諦めきれない選手がアピールする最後の場所として毎年行われるのがこのトライアウト。
ここでプレーする選手は全員が各々の所属球団のユニフォームを着てプレイする。
その中にはプロではない独立リーグのユニフォームもちらほら含まれる。
今日は10時半スタートであった。
最初は外野内野のノック。
この時点で既に勝負は始まっている。
一歩目の早さ、送球の正確さなど。
普段キャンプや試合前で見る守備練習の緊張感とはこの時点で全く違う。
そしてある程度体をほぐした後はいよいよ本番。
今年は投手42人、野手23人が参加した。
トライアウトのルールは通常の野球とは少し異なる。
カウントは1ボール1ストライクからスタートする。
初球がボールになるか、ストライクになるかで雲泥の差である。
逆に打者側も初球にストライクを取られるとたちまち追い込まれる。
そのため積極的に打ちに行かなければならない。
シビアである。
年度によって異なるが、今年は特に投手が多いため、投手は打者3人と対戦し、アウトカウントの如何により交代する。
打者は交代で守備につきながら3〜5打席ほど打席に立つ。
やはり実績のある選手、地元阪神の選手、甲子園でかつて名を馳せた選手への歓声は大きかった。
選手個々のまさに人生をかけた真剣勝負の戦いである。
彼らの一挙手一投足に場内からの視線が集まる。
特に印象的だったのは同じヤクルトを今年戦力外通告になった寺田投手と川上竜平選手の対戦である。
お互いこの前までチームメイトで思うところもあると思うが、自分の野球人生をかけた勝負の場でそのようなことを考えている余裕はないと思う。
しかし、側から見てもかなり心にグッとくるものがある。
65人の中からおそらくプロ球界に復帰できるのは5人ほどである。それほど厳しい世界である。普段のような興業の野球ではなく、選手同士の己をかけた戦いであり、こちらにもその緊張感が伝わってきた。
張り詰めた空気の中響く打球音、ミットの音。
この中で誰を応援していたというのはあまりないが、とりあえず1つだけ言えるのはみんな幸せになってほしいということ。
合格してどこかに入団するのはもちろん、これが最後の場所になる選手もいるとは思うが納得のいく形で頑張ってくれれば…。
一プロ野球ファンとしてそう願わざるをえない日であった。
(野手不足の状況で中には内野手が誰もいない場面も…誰か守ってあげてよ)
習慣
ブログを1週間以上放置していました。
そもそもは1つの習慣をつけるために始めたブログ。
読書をする習慣、楽器を練習する習慣、筋トレをする習慣…
人の能力ってそういう習慣の積み重ねなんじゃないでしょうか。その続いた期間によって差が出てくるような…。
ブログを書くと自分がなにを考えているのか、なにを経験したのかを振り返ることができます。
毎日は難しいけどもう一度頑張ってみよー。