気ままに生きます

人生いろいろ

映画 「デトロイト」 感想

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人は誰しも他者よりも優位に立ちたいという願望が根底にある。その当たり前な欲求が歪な形で変容すると、気づかぬ間に差別や偏見、レッテルを生む。そしてそれが人種単位で行われるとこのような悲劇を生んでしまうということを最悪の結果で証明した。

 

人という生き物は自らの過ちを認めたくないもので、ひとたび自分の方が優位であるとほんの少しでも思ってしまうとそれを覆すことは難しい。
当時の白人は「もう1967年だぞ」とは口では言いつつも、歴史的に見れば白人と黒人の間にははっきりとした上下関係があったことがまだ心の片隅に残っており、自分達白人の方が黒人よりも種族として上回っているという考えを共通の矜持として持ち合わせていたように思える。

だから例え白人達に誤りがあったとしても警察も、裁判所も決して認めることはなかったし、黒人が犯した犯罪も多くあるという逃げ道にすがり、事の本質から目を背けている。

 

この作品の素晴らしいところは、そういった差別や偏見を超越した根の深い問題を、自民族主義が蔓延しつつある今の時代にあえて再現しただけではなく、ミュージシャンを目指すある黒人の一個人としての心の葛藤も同時に描いている点である。
圧倒的な美声を持ちながらも、仲間を事件によって失った悲しみから白人達が喜ぶステージには立ちたくないと夢を諦め、教会で聖歌を歌う人生を選んだ若者を見て、これらの問題は大切な親友や夢をまで奪っているのだと思い知った。