ボクたちはみんな大人になれなかった
見たい映画のチケットが売り切れておりどうしようか迷っていたところ、ふとこの小説を紀伊国屋新宿店で見つけた。
映画を観るために新宿に出てきただけにすぐさま帰るのも気が引けて再び映画館に戻った。
おもむろにtohoシネマズ新宿の上映待ちあるいは暇を持て余している人たちが座るソファに腰掛け読み始めた。
特に淡い青春を送っていない自分でさえも、その切れ端のような思い出が掘り返され、記憶の蓋が再び開かれた。
誰しもが抱いていたあの時の高揚感を私小説のように描きながらも、所々で余りにもキラキラしすぎていると面食らってしまうような描写が折り込まれており、ひとつの作品としてまとまっていた。
結局は1時間半ほどでその場で読みきってしまい映画は観れなかったものの、それに類する体験はできた。それぞれの描写で地名、店名、曲名など固有名詞が使われており、情景を思い浮かべるのに苦労はしなかった。
心の隙間に染み渡って行く作品でした。